映画「FEMME」を見た。最高だった。いや、まじで。
理不尽な暴力に晒されたドラァグクイーンの復讐の話、と書いてしまうと単純すぎて説明できない映画。ただの復讐じゃない、復讐心はあっても複雑な気持ちの渦に落ちていく話。以下、ネタバレ。
歌手としてステージに立つこともあるジュールズは、あるとき、絡んできたチンピラたちを煽ってリンチされてしまう。大きなショックを受けて引きこもってしまうジュールズ。3カ月後、発展場のサウナにいくと、なんと自分をリンチしたチンピラたちの中心人物だったプレストンと遭遇する。そう、ドラァグクイーンを侮辱してゲイフォビアだと思われた彼は、実はゲイ(多分ゲイよりのバイ)だったのだ。しかし、ステージ衣装に身を包んでいないジュールズに気付かないプレストン。発展場のサウナを出て彼を誘い、関係を持つようになる。
とはいえ、おそらく自分のゲイセクシュアルに戸惑いと認めたくなさがあるっぽいプレストン。だから、リンチのときにジュールズの煽りに過剰に反応したんだよね。
ジュールズは、そんな彼の未熟な性嗜好を逆手に取って復讐しようと決心する。まだゲイ初心者の彼を虜にしてから自分とのハメ撮りをネットにして衆人にさらしてしまおうと思い立つのだ。それほどジュールズが心に受けた傷は根深かった。
でも、プレストンと逢瀬を重ねていくと、次第に恋愛対象として尊重されるようになって複雑な気持ちになるジュールズ。犯罪に手を染めて囚役したこともあるプレストンが、実は表の世界で生きたいと思っていることにも何となく感づいていく。
あるとき、自分の家にプレストンを泊めたジュールズ。朝起きると彼はルームシェアしていた友人たちと朝食を取りながら、自分の夢を語っていた。自分はアパレル業に従事していて、いずれは事業を拡大していきたいと。ジュールズの立場を思っての嘘だったが、それは全て嘘ではなく、いずれ表の世界で真っ当に働きたいという彼の未来への希望だった。
復讐することが目的だったのに、少しずつプレストンに惹かれていってしまうジュールズ。しかし、依然、自分の心の傷は深いところでジュクジュクしているまま。
ジュールズの誕生日パーティーの当日。ステージでパフォーマンスするジュールズを見て、あの日、自分がリンチした相手だと気づくプレストン。
パーティー後、プレストンは楽屋で待ち伏せしていて自分に近づいたのは復讐するためだったのかと喚き散らしジュールズを罵倒した。ともに未来を歩みたいという思いも込めたプレゼントを用意していた彼はジュールズの真意に気づいて打ちのめされたのだ。しかしジュールズも復讐心とプレストンへの複雑な思いが混ざり合い、彼にどう思いを伝えて良いのか分からない。そして、プレストンから贈られたプレゼントを見て、物語は幕を閉じる。
*
いやー本当に名作。秀逸だった。2人の思いの移り変わりや人間だからこその複雑な心境が丁寧に丁寧に描かれていた。ジュールズは復讐心からプレストンに近づくけど、彼が横暴なのは相手に気持ちを伝えるのがすごく苦手だからってことに気づくんだよね。どこかそれは、ゲイでドラァグクイーンである自分と似ている。そして、偉そうに振る舞いながらも実は変わりたいと思っている彼の本心に気づいて惹かれていく。うますぎる。
一方で、プレストンはドSに見えて実はMなんだよね。M転するシーンがまた秀逸! よくあることだけど、SぽいMの人ってパートナーにしたい人をタゲったら、まずはSっぽい振る舞いでとことん追い詰めておいて、そのたまりにたまったフラストレーションを自分に向けるように仕向けてSに育てるんだよね。まさにそう。そんな彼らが求めているのは無償の愛に近い、包みこまれるような慈愛なんだ。そして、人生経験がプレストンよりもはるかに豊富なジュールズはそのことに気づいちゃう。ああ、プレストンは愛に飢えてるんだって。彼がもし鬼だったらそれを逆手にとって虜にした後、冷酷に振ってバイバイするだろうけど、ジュールズは心優しい人。だからこそ、プレストンを突き放せなかったし、自分の中に彼への愛情が芽生えつつあることに複雑な思いを抱いていたんだろうね。
いや、なんで自分をリンチした相手にそんな思いを抱くんだよ、って思った人もいると思うけど、人って単純じゃない。憎しみだけで生きれたらどんなにか楽かってジュールズも思ったと思う。プレストンがただの偉そうなチンピラだったら、たぶん復讐はきっかり完遂してただろうね。でも、心の中に傷だらけの赤ちゃんみたいな未熟なマゾを飼ってた彼に気づいちゃって、もうどうしようもない庇護欲に掻き立てられたんだと思う。人間ってそういうもん。
はーおもしろかった。監督2人の初作品なのかな。次作、はよ。
理不尽な暴力に晒されたドラァグクイーンの復讐の話、と書いてしまうと単純すぎて説明できない映画。ただの復讐じゃない、復讐心はあっても複雑な気持ちの渦に落ちていく話。以下、ネタバレ。
歌手としてステージに立つこともあるジュールズは、あるとき、絡んできたチンピラたちを煽ってリンチされてしまう。大きなショックを受けて引きこもってしまうジュールズ。3カ月後、発展場のサウナにいくと、なんと自分をリンチしたチンピラたちの中心人物だったプレストンと遭遇する。そう、ドラァグクイーンを侮辱してゲイフォビアだと思われた彼は、実はゲイ(多分ゲイよりのバイ)だったのだ。しかし、ステージ衣装に身を包んでいないジュールズに気付かないプレストン。発展場のサウナを出て彼を誘い、関係を持つようになる。
とはいえ、おそらく自分のゲイセクシュアルに戸惑いと認めたくなさがあるっぽいプレストン。だから、リンチのときにジュールズの煽りに過剰に反応したんだよね。
ジュールズは、そんな彼の未熟な性嗜好を逆手に取って復讐しようと決心する。まだゲイ初心者の彼を虜にしてから自分とのハメ撮りをネットにして衆人にさらしてしまおうと思い立つのだ。それほどジュールズが心に受けた傷は根深かった。
でも、プレストンと逢瀬を重ねていくと、次第に恋愛対象として尊重されるようになって複雑な気持ちになるジュールズ。犯罪に手を染めて囚役したこともあるプレストンが、実は表の世界で生きたいと思っていることにも何となく感づいていく。
あるとき、自分の家にプレストンを泊めたジュールズ。朝起きると彼はルームシェアしていた友人たちと朝食を取りながら、自分の夢を語っていた。自分はアパレル業に従事していて、いずれは事業を拡大していきたいと。ジュールズの立場を思っての嘘だったが、それは全て嘘ではなく、いずれ表の世界で真っ当に働きたいという彼の未来への希望だった。
復讐することが目的だったのに、少しずつプレストンに惹かれていってしまうジュールズ。しかし、依然、自分の心の傷は深いところでジュクジュクしているまま。
ジュールズの誕生日パーティーの当日。ステージでパフォーマンスするジュールズを見て、あの日、自分がリンチした相手だと気づくプレストン。
パーティー後、プレストンは楽屋で待ち伏せしていて自分に近づいたのは復讐するためだったのかと喚き散らしジュールズを罵倒した。ともに未来を歩みたいという思いも込めたプレゼントを用意していた彼はジュールズの真意に気づいて打ちのめされたのだ。しかしジュールズも復讐心とプレストンへの複雑な思いが混ざり合い、彼にどう思いを伝えて良いのか分からない。そして、プレストンから贈られたプレゼントを見て、物語は幕を閉じる。
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いやー本当に名作。秀逸だった。2人の思いの移り変わりや人間だからこその複雑な心境が丁寧に丁寧に描かれていた。ジュールズは復讐心からプレストンに近づくけど、彼が横暴なのは相手に気持ちを伝えるのがすごく苦手だからってことに気づくんだよね。どこかそれは、ゲイでドラァグクイーンである自分と似ている。そして、偉そうに振る舞いながらも実は変わりたいと思っている彼の本心に気づいて惹かれていく。うますぎる。
一方で、プレストンはドSに見えて実はMなんだよね。M転するシーンがまた秀逸! よくあることだけど、SぽいMの人ってパートナーにしたい人をタゲったら、まずはSっぽい振る舞いでとことん追い詰めておいて、そのたまりにたまったフラストレーションを自分に向けるように仕向けてSに育てるんだよね。まさにそう。そんな彼らが求めているのは無償の愛に近い、包みこまれるような慈愛なんだ。そして、人生経験がプレストンよりもはるかに豊富なジュールズはそのことに気づいちゃう。ああ、プレストンは愛に飢えてるんだって。彼がもし鬼だったらそれを逆手にとって虜にした後、冷酷に振ってバイバイするだろうけど、ジュールズは心優しい人。だからこそ、プレストンを突き放せなかったし、自分の中に彼への愛情が芽生えつつあることに複雑な思いを抱いていたんだろうね。
いや、なんで自分をリンチした相手にそんな思いを抱くんだよ、って思った人もいると思うけど、人って単純じゃない。憎しみだけで生きれたらどんなにか楽かってジュールズも思ったと思う。プレストンがただの偉そうなチンピラだったら、たぶん復讐はきっかり完遂してただろうね。でも、心の中に傷だらけの赤ちゃんみたいな未熟なマゾを飼ってた彼に気づいちゃって、もうどうしようもない庇護欲に掻き立てられたんだと思う。人間ってそういうもん。
はーおもしろかった。監督2人の初作品なのかな。次作、はよ。
