もう今年も終わりそうなので読んだ本ベスト2023をぽつぽつと。
漫画でベストはこれ。人が恋愛しないようになった未来で発生した「非恋愛コミュニティー」シェアハウス襲撃事件。銃弾により亡くなった住人たちの追悼記事を書くため、新聞記者の主人公が自身の過去と向き合いながら取材していく話。
人の心の有り様が丁寧に丁寧につづられていて、唸ってしまった。襲撃犯もシェアハウスの住人であり(元だったかも)、彼の心情も見放すことなく描ききった著者の力量に圧倒された。すっきりと片付いたコマも雑音がなくとても読みやすかった。
SNSで話題になって気になった、1話のラストでどんでん返しになる恋愛(ちょっと艶あり)×不気味系ホラー。主人公が、がんで死亡した兄の恋人の小説家に恋をしている、という淡い恋愛話かと思いながら読んでいくと、実は異形のものとなり恋人に憑いている兄の姿が見えている主人公の闘いの物語だということが判明する。でも最新刊でまたさらなるどんでん返しがあって、ネタバレするとアレなので、精神的な嗜虐モノ、はだけた着物、恋と暴力とか好きな人はぜひ。
今年この著者の本に出会えて本当に良かった。写真家の植本一子。正直であることと誠実であること、生きることと愛することが何なのかを考えるきっかけになった。彼女の本を一気に6冊か7冊くらい読んだけど、これが一番だった。
おそらく一番彼女がつらく苦しい時期に書かれた日記集。夫のECDが亡くなる数カ月前までが書かれている。でも、亡くなっていく人間に心から寄り添っていて涙しながらも楽しかった思い出を回想して……みたいな甘っちょろいことは書かれていない。常に寄り添ってくれなかった苦しみを抗がん剤投与中のECDにLINEで送ったことや、家庭の息苦しさから気になっていた男性に会いに行ったことなどが隠すことなく書かれている。これは彼女の読者への誠意であると感じると同時に、鬼気迫る筆致は圧巻だった。
思い込みがどれほどまで人の体調に影響するのかを医学的にまとめた1冊。これはもう本当に歴史的な名著だと思う。最近よく心因性という言葉を聞くが、これは気のせいとはまた違う。だから、心因性で具合が悪い人を責め立てるべきではないし、そういう思いもまずは捨て去ってほしい。
この本ではいわゆるプラセボとノセボについて、多種多様にわたる事例などが著者の経験からつづられている。中でも強烈だったのはイボ取りの話。医学よりも民間療法の方が俄然効いているけど、その理由は「信じる心」に他ならない、と。
何かしらのきっかけで不安になり心拍数があがって動悸が激しくなり手足に汗にぎり、もしかしたら血糖値に異常があるのかも、心臓に異常があるのかもと思い、めちゃくちゃ具合が悪くなる病気がある。いくつかの病名があるけど、それも思い込みが原因である場合もある。でも本人は「思い込みでこんな症状がでるわけない」とかたくなに思い込んでいる。その思いは本当に強烈で、本当に身体を病気のようにしてしまうから難儀だ。
一方、反対に作用すると身体の不調がいとも簡単に治ってしまうことがある。心臓病でどこかの血管を結紮したら治るとされていた病も、医学が発達して「あ、ごめん実は効果なかった」となっても、当時はたしかにその手術を行ったら患者の症状はぴたりと治まって完治していたらしい。医師である著者自身も効果がないと思っていたホメオパシーで何をしても駄目だった不調が驚くほど治ってしまった。これでホメオパシーすげえ! とならないのはさすが医師。だって希釈されまくった液に浸したレメディーには元となる原料の成分は一切含まれておらず、効果があるとしたら、液体の分子構造自体が変化してることになるけど、それは現代の科学においてありえない。ってことを理解している立場だったから、この名著が生まれた。非常に読み応えがあっておもしろかったので、思い込みで具合が悪くなっちゃう人にこそオススメ。
多くの女性にインタビューというかもっとくだけた感じで話を聞いたエッセイ集になるのかな。そのインタビュイーたちの人生が摩訶不思議というか最高におもしろくて魅了された1冊。中でも、自分を殺してほしいと依頼した殺し屋の男性に恋してしまった女性の話は最高だった。著者のインベカヲリは『家族不適応殺』『のらねこ風俗嬢』もウルトラ名著なので、ぜひ。
漫画でベストはこれ。人が恋愛しないようになった未来で発生した「非恋愛コミュニティー」シェアハウス襲撃事件。銃弾により亡くなった住人たちの追悼記事を書くため、新聞記者の主人公が自身の過去と向き合いながら取材していく話。
人の心の有り様が丁寧に丁寧につづられていて、唸ってしまった。襲撃犯もシェアハウスの住人であり(元だったかも)、彼の心情も見放すことなく描ききった著者の力量に圧倒された。すっきりと片付いたコマも雑音がなくとても読みやすかった。
SNSで話題になって気になった、1話のラストでどんでん返しになる恋愛(ちょっと艶あり)×不気味系ホラー。主人公が、がんで死亡した兄の恋人の小説家に恋をしている、という淡い恋愛話かと思いながら読んでいくと、実は異形のものとなり恋人に憑いている兄の姿が見えている主人公の闘いの物語だということが判明する。でも最新刊でまたさらなるどんでん返しがあって、ネタバレするとアレなので、精神的な嗜虐モノ、はだけた着物、恋と暴力とか好きな人はぜひ。
コーポ・ア・コーポ 1 (MeDu COMICS)
完結してしまった愛すべき日常系漫画。舞台はたぶん西成っぽいドヤ街にある安アパートで、著者がかつて住んでいた住宅がモデルだと知って感動してしまった。住人は結婚詐欺やってたり突然首吊ったり人から逃げてきたり、蝋燭の日で即席ストリップしてたり、それの料金取って暮らしてたりとなかなかハートフルなアパートなんだけど、悲壮感が全くなく、住人たちとその関係者の(ハードな)日常があっけらかんと描かれていて最高だった。続編描いて……
こっからは書籍ベスト。
完結してしまった愛すべき日常系漫画。舞台はたぶん西成っぽいドヤ街にある安アパートで、著者がかつて住んでいた住宅がモデルだと知って感動してしまった。住人は結婚詐欺やってたり突然首吊ったり人から逃げてきたり、蝋燭の日で即席ストリップしてたり、それの料金取って暮らしてたりとなかなかハートフルなアパートなんだけど、悲壮感が全くなく、住人たちとその関係者の(ハードな)日常があっけらかんと描かれていて最高だった。続編描いて……
こっからは書籍ベスト。
おそらく一番彼女がつらく苦しい時期に書かれた日記集。夫のECDが亡くなる数カ月前までが書かれている。でも、亡くなっていく人間に心から寄り添っていて涙しながらも楽しかった思い出を回想して……みたいな甘っちょろいことは書かれていない。常に寄り添ってくれなかった苦しみを抗がん剤投与中のECDにLINEで送ったことや、家庭の息苦しさから気になっていた男性に会いに行ったことなどが隠すことなく書かれている。これは彼女の読者への誠意であると感じると同時に、鬼気迫る筆致は圧巻だった。
思い込みがどれほどまで人の体調に影響するのかを医学的にまとめた1冊。これはもう本当に歴史的な名著だと思う。最近よく心因性という言葉を聞くが、これは気のせいとはまた違う。だから、心因性で具合が悪い人を責め立てるべきではないし、そういう思いもまずは捨て去ってほしい。
この本ではいわゆるプラセボとノセボについて、多種多様にわたる事例などが著者の経験からつづられている。中でも強烈だったのはイボ取りの話。医学よりも民間療法の方が俄然効いているけど、その理由は「信じる心」に他ならない、と。
何かしらのきっかけで不安になり心拍数があがって動悸が激しくなり手足に汗にぎり、もしかしたら血糖値に異常があるのかも、心臓に異常があるのかもと思い、めちゃくちゃ具合が悪くなる病気がある。いくつかの病名があるけど、それも思い込みが原因である場合もある。でも本人は「思い込みでこんな症状がでるわけない」とかたくなに思い込んでいる。その思いは本当に強烈で、本当に身体を病気のようにしてしまうから難儀だ。
一方、反対に作用すると身体の不調がいとも簡単に治ってしまうことがある。心臓病でどこかの血管を結紮したら治るとされていた病も、医学が発達して「あ、ごめん実は効果なかった」となっても、当時はたしかにその手術を行ったら患者の症状はぴたりと治まって完治していたらしい。医師である著者自身も効果がないと思っていたホメオパシーで何をしても駄目だった不調が驚くほど治ってしまった。これでホメオパシーすげえ! とならないのはさすが医師。だって希釈されまくった液に浸したレメディーには元となる原料の成分は一切含まれておらず、効果があるとしたら、液体の分子構造自体が変化してることになるけど、それは現代の科学においてありえない。ってことを理解している立場だったから、この名著が生まれた。非常に読み応えがあっておもしろかったので、思い込みで具合が悪くなっちゃう人にこそオススメ。
多くの女性にインタビューというかもっとくだけた感じで話を聞いたエッセイ集になるのかな。そのインタビュイーたちの人生が摩訶不思議というか最高におもしろくて魅了された1冊。中でも、自分を殺してほしいと依頼した殺し屋の男性に恋してしまった女性の話は最高だった。著者のインベカヲリは『家族不適応殺』『のらねこ風俗嬢』もウルトラ名著なので、ぜひ。