あらためて吉本ばなな、素晴らしくよいと思った。



『小説家としての生き方100箇条』が本当によく。吉本ばななが小説家として生きるためにどう日々心がけているかをまとめた本なんだけど、何も小説家だけじゃなく別の職を糧にして生きる人にも大事なことが詰まってた。

例えば、手を怪我しないとか大きな流れには逆らわず生きていくとか、つまらない店の常連になるなとか。そういうちょっとしたことでもキラリと光るカッコいいこだわりが100個書かれているんですよ。しかも吉本ばななの視点から。

吉本ばななといえば私の世代では間違いなく神様みたいな存在の作家で。それはもうめちゃくちゃ売れに売れた作家で、たとえ本に興味がない家にも一家に一冊はあったという人。私も物心ついたときから家には吉本ばななのベストセラーがちらほらあって。『哀しい予感』『キッチン』『白河夜船』あたりから読んで初期作品はずらっとほぼ読んで『N・P』で完全にはまったという感じ(な人も多いと思う)。

近年、あんまり読んでいなかったのは初期の強烈な香りに魅了されていて、完全にあの世界観の中毒になっていたことと、読むジャンルが増えたのとノンフィクションに好みが偏り始めたこともあると思う。あとはやっぱり作風の変化に少し今読みたいものとの合致が減ったこととか。

でもやっぱり吉本ばななは吉本ばななだなあと。見えないものを感じ取る力がある人は存在が心地よい。すべて科学で証明できるし目に見えないものはスピリチュアル草wみたいな人は、まあ今の時代むやみなスピリチュアル信者とか陰謀論とかあまりに多くて辟易するような時代だからしょうがないかもしれないけど、やっぱり目に見えることだけがすべてだと思うといつか転んだときに八方塞がりになる気がして、宗教もスピリチュアルも子宮系とかも近寄らないようにしている私でも、何かそういう全体の流れみたいなものはあると思わざわるをえないという出来事が腐るほどあった。

例えば嫌いな人が次々と死んだり大怪我したり不幸になったりする人。本人はとても病弱なんだけど、それが引き換えとなって(もしくは逆)自分を傷つける人がそういうふうになっていくとか。

会いたいと思った友人とふとまったく縁もゆかりもない土地を旅行中にばったり出くわすとか。

電話がほしいと思ったときにその人から知らせがある話をよく聞くとか。

量子力学とかそういうので説明する人もいれば思いを気とかで解き明かす人もいるけど、要は自分じゃ知ることのできない大きな一連の流れがあって、その中で小さな存在として生きているんだから理解を超えることがあって当たり前、ということを吉本ばななはよく知っていて、それを小説に落とし込んで書いてきたのだと思う。あの雰囲気と文体とあいまって独特な魅力を放ってきたよね。

その彼女が100個も生きる上で大事にしていることを書いてくれてるって、すごい本だと思った。
あまりに良かったので、この機会に最近の本も購入して読んでる。やっぱり吉本ばななで育ったので栄養だ。