ホドロフスキーのサイコマジック
なんとなくホドルフスキーな気分だったので、映画「ホドロフスキーのサイコマジック」を見てみたらかなりおもしろかった。

ホドロフスキーのサイコマジック

ホドルフスキーは映画監督だけど詩人でタロット専門家で独自の心理療法も行っている。この映画はホドロフスキーの心理療法を実際に行っているドキュメンタリー。というか、最初普通にモキュメンタリーだと思ったよね。

彼の心理療法は、トラウマに関して創造的なアプローチをする。羞恥心と外界からの刺激を利用しながら無意識にアクセスして、当人に解放をさせる。普段しないこと/されないことにより無意識にアクセスするみたい。なるほど。人によって方法は様々で、印象的だったのは経血で自画像を描くというもの。これをニスで塗って額縁に入れ、飾ることでトラウマからの解放を試みる。あとはヒーラー(みたいな人)が対象者の全身にくまなく触れていくってのも何回か登場した。普通のタッチではなく、それはもう内臓に触れんばかりに深くうねるような触り方。嫌な人は嫌だろうと思うけど、特に親に関するトラウマがある人には効きそう。

なんだろう、そうされたりしたりしているうちに、恥ずかしさとか理性の限界を突破する瞬間があると思うんだよね。他と自分との境界線があやふやになる瞬間だと思うんだけど。そこから、トラウマを癒やす何かを注入していくんだと思う。癒やしだったり自信だったり安心感だったり。

そういや、安田隆も自著でたびたび触れているけど、詰まりや痛みがある場所には集中してその感覚を増大させて解放させるといいよ、みたいなことなのかな。

画的に美しかったのは「エンドレス・ポエトリー」にも登場した、親に関するものに多数の風船を付けて空に放つという方法。映画では焼けた家から出てきたママのコルセットを、たくさんのハート型の風船につけて飛ばしていた。実際に行っていた心理療法では父親の顔を付けて飛ばしていた。これいいな。普通にできそう。

ただ、心の中からトラウマを引っ張り出してこなくてはならず、そのためにはかなり刺激を与えないとダメっぽい。見てると。

ああ、あと最後の方に何回も癌を繰り返した女性がステージに立ち、何百人もの観客から気を送ってもらって10年後も生きている(寛解した?)というエピソードもあった。これは質より量という感じなんだろうか。ホドルフスキーといえばカルトの大家なので、観客が皆両手を前に突き出して念を送っているそのシーンは映画っぽくてかなりハマってて、これはこれでおもしろかった。モキュメンタリーじゃないところがまた。

ところで「ホーリー・マウンテン」は見たけど「エル・トポ」はまだ見てないんだよね。見なきゃと思いつつ、VODのどれかにこないかな……。