ふと夜中に岡崎京子欲がふつふつと沸き起こり、いろいろ読んでみた。

リバーズ・エッジから入り、pinkに愛の生活、カトゥーンズ、ヘルタースケルターと王道があって、ジオラマボーイパノラマガール、私は貴兄のおもちゃなの、エンド・オブ・ザ・ワールドとか色々。文芸別冊では当時の対談集とか吉本ばななのインタビューとかが載っていた。吉本ばななも宮台真司もリバーズ・エッジがいまいちという感想なのが意外だった。露悪的すぎて鼻白んでしまう、的なことだったと思う。

私は何が一番好きだっけと思い返すけど、たぶん時期によってまちまちだと思う。ずっとpinkが好きだったけど、がつんとやられたのはリバーズ・エッジとジオラマ~だったし。でも今ふと読み返すと、エンド・オブ・ザ・ワールドと愛の生活にはとんでもない力があるなと改めて感じた。

愛の生活。兄大好きっ子なメンヘラボダ女子とその兄、何もかも普通な年上彼女に振られたばっかの主人公が同居する話。とにかくメンヘラ女子の純子が魅力的でダメ人間すぎて、ひたすら主人公の目線で引き込まれる。ああいう白か黒か、0か100かしかない人間で、素質はありつつも他人のせいでトラウマを抱えて成長した思春期~20すぎの女子を書かせたら岡崎京子は天才だと思う。pinkのゆみちゃんもそうだよね。一見バランスはよく見えてもめちゃくちゃアンバランス。でもそれが魅力。不安定じゃないと人を魅了しない。

そうそう一見まともなのに実はクズとか、そういうキャラもとてつもなく良いのが岡崎作品の魅力。愛の生活の兄もそういう人で、自分でやばいところまで踏み込んでおきながら都合よく身を引いちゃう。頭の良さゆえなんだろうけどとても残酷で、そのせいで何人もの女子の人生が狂わされていく。というかわざと素質アリな女子をタゲってるんじゃないかと思うほど。

エンド・オブ・ザ・ワールド表題作の女子もそう。タンクトップにボブ、ショートパンツで体が傷だらけでいつもタバコ吸ってる顔整い。破滅に向かうロードムービー的な作品も震えるほどよくて、私は貴兄の~に収録されてる3つ数えろとかもこのタイプ。無敵なソシオパスの夫婦がバイオレンス&ハッピーに突き進む話。水の中の小さな太陽もそう。美人で秀才女子なのに、ただひとつの悩みに揺さぶられて破滅に向かう女子の話。よい。

岡崎作品の魅力とは、に戻るけど、断片的な情報だとラインがセクシーでシンプルなロングワンピースを着てる女子のオシャレな感じとか、ストールを羽織ってるセクシーではすっぱな雰囲気とか、静かな夜に2人で誰もいないところをただただ歩いたり進んでいったりする心もとないけどワクワクする感じとか、普通には生きれない人のはためから見たら楽しそうだけど本人はそれどころじゃないけど諦めてる感じとか。ヘルタースケルターのりりこもそんな感じだった。先には破滅しかないけど諦めてて、でも滅びるまでとことんやってやろうじゃんっていうあの感じ。

あとはバイオレンスに残酷さ、それとはギャップのある軽いノリだったり絵柄だったり。でも人間ってそうでしょ? と言いたげな筆致。人生は気楽なのに気楽じゃない、気付かない振りしてたほうが幸せだけど、どうしても気にしちゃう、気にしたくないのに、みたいな女子たちの物語。

それを地でいってる女子たちのバイブルだっただろうし、周りを見渡してももれなくそうだった。ただあまりに売れたから、漫画好きとか文学好きとかもとりあえず有名どころは読んでいたおぼえがある。

うたかたの日々とかも読み返したほうがいいのかな。何のために? 必要性に迫られてるわけじゃないんだけど、なんか読みたくなっていて、読んだ方がいいんじゃないかという気にもなっていて。たぶん今の私に必要だから欲しているわけで、栄養と同じようなもので、以前に読んだ記憶を掘り返すというよりは今の目であの物語をどう捉えるかを知りたい、みたいな感じ?

そういうふうに思わせてくれる作品自体めずらしいよね。夜の空気、オシャレな地獄、フリルのついた暴力。たまらない。


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そんでなぜかやまだないとも読み返して。なんとKindle Unlimitedに初期作品が入っていたのです。個人的お勧めはエロマラ。最高。致死性が高い性病が世界中で蔓延。そんな中でも気にせず自分の欲に忠実にコールガールをやって日々過ごしているニンフォマニアのトリコが主人公。彼女を女性では唯一愛したゲイのシゲルくんが恋人なんだけど、2人の最後のやり取りが本当に悲しくて切なくて最高。滅びる世界で世界中が愛し合ってるという錯覚がハッピー。

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なんでやまだないとを読み返したかというと、もともとものすごく好きではあったんだけど、よしながふみ対談集でBLについて、女子は自分が汚れるわけにはいかないから身代わりとして汚れる対象を見つけて楽しんでる、と。汚れることはある種、自由な気持ちになることだから、みたいなことを言っていて、それについて言及している投稿を見掛けたから。

自由な気持ちになるっていうのはこの場合においては性的奔放さであり、女子は妊娠や性病感染率が男性と比べて高いなどのリスクから本人が奔放でいたいと密かに思っていてもできないことが多い。だけどBLでは自分をキャラに投影して共感して、ひとときの自由を楽しむと。

何もBLだけじゃなくて、例えばやまだないとの漫画にはかなり性的に奔放な女子が登場する。それを見て得るのは興奮じゃなく、たぶん安堵や人にいえない憧れだったりするのだろうなと思う。いいなあああアタシもそうしたいけど無理だから代わりにやってくれてありがと~~~~! みたいな? また、やまだないとはそうしたキャラについて汚れてくれるためのキャラとして自覚的に描いていると。

すごく納得して、ああなるほどなあと思った。そこにあるのは放埒というよりも自由。しっくりきた。