「ザ・ノンフィクション」6月2日放送回である私のママが決めたこと~命と向き合った家族の記録~を見た。

これは、スイスで安楽死することを選んだ子宮頸がんの44歳のキャリアウーマンのマユミさんを追ったドキュメンタリーである。ご本人のXが残っているので、気になった人はぜひ覗いてみるといいです。アカウントは明記しません。探したらすぐに出てきます。私はすべてのポストを読みました。

番組では3年半前に予後の悪い子宮頸がんが判明し治療に臨んできたものの打つ手なしの状態となりご本人の希望でスイスに渡航することに。手続きなど全てご本人が行っており、安楽死の許可も実施に渡航する結構前に下りていたもよう。

安楽死を選んだ理由は耐え難い痛みと、脳転移したために最期まで自分を保てることができない不安と危惧から。スイス渡航時には視力もほとんど失っており、頭皮の皮下に転移した癌は目視できるほど大きくなっていた。

とはいえ本人はまだまだ元気に会話でき歩ける状態。意思疎通もしっかりしている。そんな状態で死を選ぶことに抵抗を感じた人は少なからずいただろう。

しかしご本人のXへの投稿を見ていたら、動けなくなる前に渡航したい思いなどが淡々としかし切実につづられていた。また、番組では美しい美談としてまとめられていたが、緩和が本人の望む形でうまくいかない医療の問題点が何度も何度も指摘されてた。

たぶん多くの人は癌になったとしても医療の発展により死ぬまでしっかりと痛みをコントロールできると思い込んでいるだろうけど、残念ながらそんなことはない。医師ガチャによってハズレを引くと何ヶ月も苦しみ抜くことになる。医師は玉石混淆。神様じゃないし万能でもない。普通に誤診は当たり前。マユミさんもXの投稿によると2件で誤診されており、3件目で癌の診断が下ったときにはかなり時間が経っていたそうだ。大げさに悪い状態だと思い込む医師ほどマシなのかもしれないね。

そう、医師は若い患者が重くて進行している癌だとは思わない傾向にある。特に年寄り。昔は癌は高齢者の病気だったからね。でもAYA世代の癌がめちゃくちゃ増えている昨今、若い人の癌など珍しくもないのに診断の選択肢から省く駄目な医師がいる。本当に駄目だよそれ。

あと緩和がものすごくヘタな医師もたくさんいる。いまだ苦しみながら亡くなる人の多いこと。だから安楽死は必要なんだよ。苦しみぬいて「頑張ったね!」って、どんなホラーだよ。なんで死ぬまで地獄の苦しみを味わいながら頑張らなきゃいけないんだ。おかしいだろう普通に考えて。

マユミさんは眠れないほどの激痛をXにつづることもあった。不安+痛み。そりゃもう休ませてくれって思うだろう。なのに日本だと安楽死した方が厳罰に問われるためスイスなどに渡って眠らせてもらうしかない。なお費用は150万前後だったかと思う。これもあちこちで公開されてる。

番組では彼女が点滴により安楽死するシーンも収められていた。最期、テレビ電話で娘たちとつながり、夫に見守られながら息を引き取った。病気になるまでとても幸せな人生だったと書かれていた(ただ、ご実家とはそんなに仲良くないようだった)。

いろいろ思うことはあるけど、娘さんたちが本当に気丈で。ずっと「ママ大丈夫だからね」って声をかけてるの。たぶん多くは土壇場で「ごめんやっぱり死なないで帰ってきて」って泣き叫ぶと思うんだけど、娘さんたちはマユミさんを尊重した。最期まで。ただただすごいと感じた。なんて大人なんだろう。壮絶な闘病を間近で見ていたからというのもあるだろうけど、それにしても達観している。

マユミさんご本人は番組で見る限りはクールで知的で少しかわいらしさもある女性だったが、Xでは目の付け所や言葉の選び方がシャープで相当頭が切れる方だったのだなと感じられた。だから数ある選択肢から安楽死を選んだのは納得。なんで自分が誰なのか分かんなくなっても死なせてもらえないんだろうね、日本。

自分だったらどうだろうとふと考える。自分が当事者だったら。痛みに苦しみ続けてもう治らないと分かっていたら。死なせてくれと思うだろうし、痛みの苦しさからとっさに首をかっきるとか吊るとか飛び降りるとかくらいはするかも。ずっと痛いって辛いと思う。ちなみに私は飛行機が全く駄目で海外旅行に何度も行ってはいるもののできれば乗りたくない派なので、体調不良の中でスイス渡航は無理だと思う。

では家族だったら。どうしてもスイスで死にたいと言われたら。毎日死にたいといわれ続けたら。

そういや、友人が希死念慮が高まりすぎて死にたい死にたいと毎日言い続けて色々大変なこともあって最期は自死したんだけど、葬儀での家族のどこかほっとした顔が忘れられない。悲しみで号泣しているのに、ほっとした顔なんだよね。

それを思いだした。ふと。疲れ果てた中でこの人が生きたいと思うことはもうないのだと思ったら、つらいけど一緒に渡航して見守るかな。というか自分も一緒にころしてくれって思うかも。隣で。

安楽死の議論が高まると必ず発生するすべり坂論。人ってこんなにも非情で性格悪いんですよって思ってる側からの意見が大半で、そう思わざるを得ないことをされてきた立場の人たちが口にしてるけど、安楽死が合法に=自分たちの存在意義が否定された、ってわけじゃないから、そのあたり分けて考えてほしいなと思いました。なんかね近しい当事者じゃない人が一生懸命主張をしている姿は分かるんだけど、一方で苦しみ抜いて今この瞬間にもつらいきつい思いをしている人を全く見ようともしないんだなーって。強制的にそんな立ち位置にされたことが悔しくてしょうがないみたいな。そんな気持ちから主張しているんだったらやめてほしい。

マユミさんは当初取材を拒否していたけど、安楽死について知ってもらいたいという思いから家族全員顔出しでの取材を受けることにした。命をかけた思いを受け取った人は多いと思う。