映画「作家、本当のT・J・リロイ」を見た。


2000年代前半に世の中を騒がせた美少年作家の真実と嘘。当時、18歳で書いた悲惨な自伝がヒットして映画化までされて話題に。さらに本人が金髪のミステリアスな美少年ということでセレブたちがことごとく親友だと言いまわって一躍時の人に。

でも6年後、実は書いていたのは40代の作家であるローラ・アルバートだとすっぱ抜かれて、ローラは詐欺罪で4000万円弱の賠償金を払うことに。

ちなみにリロイを“演じて”いたのはローラのパートナーの妹だった。

っていう、嘘みたいな本当の話が20年くらいに前にあって。当時たしか映画も見たし原作も読んだと思うんだけど、そこまで覚えてないなという印象。悲惨な鬱映画にあげられていたので見たんだと思うけど。内容を確認するに好きっぽいんだけどなあ。

映画のタイトルは「サラ、いつわりの祈り」。ママ役のアーシア・アルジェントが監督もやっていて、めちゃくちゃうまかったのはうっすら覚えている。ああいうストリートガールって、キラキラしながらもどこか退廃的でだらしなくって、それがまたぐっと引き付ける魅力を放ってて目が離せない。

で、今回見たのは一連の騒動をローラが語るドキュメンタリー。

簡単にいうと親の友人から性的虐待をされたローラがずっと精神不安定で、それをどうにかするために別人格であるリロイが書いたのが原作となった自称自叙伝。母親は14歳でジェレマイア(リロイ)を産んでトラック運転者相手に売春する娼婦。虐待されていろいろあってHIVに感染、という設定。全部ローラの創作。

そりゃ、センセーショナルな内容で気の毒な美少年が一躍文壇に登場したら退屈な人たちが喜ぶに決まってるじゃん。ってのをローラ自身がよーくわかってたんだと思う。

しかもドキュメンタリー見たら、当時の電話のやりとりのほとんどが録音されてるの。ローラが録音してたの。てことは、いずれバレたときのためにこうやって映像作品にしようと思ってたってことだよね。どこまでも策士だなあ、たくましい。

まあそれで見事にみんなを欺いたわけだけど、なんでころっと騙されたんだろうって思った。だって、リロイに扮していたサヴァンナ・スヌープの骨格はどう見ても男じゃない。いくら美少年に見えるとはいっても。声だって。

みんなどこかで嘘だってうっすら思ってたんじゃないだろうか。でもそういうかわいそうな過去を持ちながらも大成功した天才美少年がいてほしかったのでは。しかも不治の病をもってる。いつ発症するかひやひやする緊張感を持たせてくれる。

日本だって美少女作家がもてはやされて、どんどん若い子たちに文学賞をとらせた時期があったよね。あと覆面作家でもレイプされたり相手が白血病で死んだりシンママになったりしてる人とか、もう援交ゆえのエイズで亡くなっちゃったJKからの遺言で中年男性が書いてヒットした小説とか。みんなそういうの大好きだよね。あーあと評論家がJKのふりして書いた小説もヒットしてて、それは知的障害を持つ美形の兄と関係持ってるっていう設定だったっけ。

ドキュメンタリーでローラは自分の生い立ちを話すんだけど、最後に親の友人である男性から痛みと快楽を同時に教えられて、そこから自分がおかしくなったと語っていた。あれは多分本当なんだろうなとは思う。

幼少期にそういうことにはまってたりされたりしてストレス発散のために性的快楽を利用する子って、我慢が苦手で依存傾向強くない? だって無理やりオキシトシンとエンドルフィン出させるんだよ。たまにならよくても、成長過程でしょっちゅうすると確実に脳がおかしくなりそうじゃない?

ローラがどのくらいの頻度でそういうことをされていたかは不明だけど、本人が語ってる通りなんだとは思った。そしてあの才能はその代償だったのか、もともと持ち合わせていたものだったのか。

u-nextで「サラ、いつわりの祈り」配信してくれないかなー。