藍川じゅん『鬼性欲ブスのOCCC道場』を読み終えて相変わらず最高におもしろかったのでnoteも読んでみたら、大恋愛して振られたことや浮気についてかなり寛容な夫と別れるとか別れないとかの話になっていて驚いた。続きが気になりすぎて、たびたびチェックしている。



そもそも女性のヤリマン系エッセイストといえば菜摘ひかる、井島ちづる、瀧本容子あたりが思い浮かぶけど、皆結構メンヘラでもある。誤解を恐れずに言えば私はメンヘラの人が書く文章がかなり好きで、その理由は総じてむき出しであり実直で生の言葉たちであるからだ。読んでいて安堵するのだ。

菜摘ひかるも井島ちづるもすでに鬼籍に入っているが、瀧本容子は存命。先日出版された『アイアム氏精神疾患フルコース』は本人のとんでもないスピードで生きてきた人生とメンヘラ&ヤリマン履歴が事細かに綴られていて圧巻だった。



藍川じゅんはというと、メンヘラではない。なのにめずらしく私の琴線に触れて、彼女の書く文章がかなり楽しみである。突き抜けて明るく、多くの女性にありがちなセックスの代償である罪悪感や落ち込みがどこにも見当たらなくて清々しいのだ。別に罪悪感を持っていいし落ち込んでもいいんだけど、それはそれで好きで藍川作品は藍川作品のとんでもない明るさで好き。説明が難しいけど、つまりはどっちも大好物ということ。

『鬼性欲ブスのOCCC道場』でもっとも癒やされたエピソードは描き下ろし特別編「『今おしっこを漏らしました』と宣言」。藍川は新興宗教団体の教祖の孫としてちやほや育てられたこともあり、基本的に我慢はせず、尿は垂れ流しだとの告白から始まるエッセイで、彼女の数々のおもらしエピソードが綴られている。

実は私はかなりの頻尿で、原因は1日に何リットルも飲む白湯とか緑茶とかなんだけど、飲まずにいられないほど大好きなので常に尿意と闘っている。さすがに外出時は水分摂取を控えるものの、「やばい外で漏らしたらどうしよう」という心配から心因性の頻尿となっていて、これが結構つらい。

でも藍川の前述のエッセイを読んで「ああそうか、別に漏らしていいんだ」とちょっと気が楽になった。義実家に買える途中に漏らしてスニーカーをべちょべちょにしながら歩いて前を歩いていた女子に不審に思われた藍川。新宿三丁目付近でタクシーから降りた直後くらいに漏らして、バイト先に助けをもとめた藍川。別に気にもせず、そのまま飲みに行ってしまう藍川。

強い、強すぎる。というかむしろもう憧れの存在。私は今すぐ彼女になりたい。漏らそうが、それを人に悟られようが気にしない強靭な精神を持つ彼女になりたい。

ヤリマン系とはちょっと路線が違うけれど性を扱ったエッセイ漫画家といえば永田カビ、卯月妙子あたりが有名。あとは、ボコられることと恋愛感情が混同したことをエッセイ漫画で見事に描きつづったペス山ポピーになると、ちょっとメンヘラとは違う。でも氏(としたのは性別がXであるため)の作品は揺るぎないメタ視点が確立されていて、『泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』『女の体をゆるすまで』は一読の価値あり。



前者は本気でボコられることで性欲や恋愛感情を抱く特殊性癖を持った著者の恋愛と失恋について描かれた作品。紆余曲折を経て顔が好みの相手に巡り合うも……。

この話の後日談がウェブで公開されていて、上下巻の後にこれを読むと全体の印象ががらりと変わると思うのでオススメ。というかこれを収録した完全版を出してほしいと切実に思ってる。

にしても。本当に頻尿つらくて先日渋滞に巻き込まれて、しょうがなく車にストックしてあった簡易トイレに排尿したという苦い思い出があるんだけど、人生で何度『家畜人ヤプー』のトイレが開発されてくれないか願ったことか。ホースみたいな管が伸びてくて股間に装着→そのまま排尿できる超便利なシステム。車の中は当然のこと、何なら脇道にもそっと設置しておいてほしい。