映画「LOVE LIFE」を見る。前評判でちらっと見掛けて見たかった作品。u-nextで有料配信中。
木村文乃演じる主人公の妙子は6年前に夫のろう者である韓国人男性との間に息子の敬太をもうけていたが、夫が逃げてしまい、1年前に職場で知り合った二郎(永山絢斗)と結婚。しかし二郎の両親は妙子のことをよく思っておらず、舅は失礼にも妙子のことを中古だと吐き捨て、姑も表向きは理解者であるものの早く孫の顔が見たいと平然と言い放ったりする。あるとき、敬太が妙子の不手際が原因した事故で亡くなってしまう。葬儀には出ていったはずの元夫がやってきて妙子を平手打ちする。周りから自分を責めてはいけないと慰められ続けていた妙子はわだかまりを感じており、元夫に殴られたことで自分が怒られたかったことに気付く。それから夫への思いが溢れて再び惹かれていくが……というストーリー。

感想としては、クズすぎる夫の人物像が絶妙でうまかった。ろう者同士で結婚した前妻のもとからも逃げて、妙子のもとからも逃げる。さらに敬太が死んだことで前妻との間にもうけていた息子に会いたくなった、と妙子にウソをついて金を借りて韓国へ。おそらく、ああいうタイプの人間の悪気なさや逃げ癖をうまく表現したんだろうと思う。

深田晃司監督は「淵に立つ」でも「本気のしるし」でも、何かしらの出来事によって突然生活が一変した人のその後を描いていた。映画に強いメッセージ性はないものの、ひとりの人間の生き方を丁寧に観察していくような目が感じられる。

また本作ではたびたび、ベランダに釣られた鳩よけのCDが効果的に映り込む。光を反射してキラキラと輝く。何もない部屋に動きのある光が迷い込んだ様子は静寂ともの悲しさをうまく表現している。また、二郎に黙って妙子が元夫に両親が住んでいた空き部屋を貸していることがバレるシーンでも、このCDに反射した光が効果的に作用する。とすれば、不穏の予兆を感じさせる存在なのだろうか。

映画の最後は劇的でもなく、ただ静かな終わり方だった。だから数年後、この映画のことを覚えているかはわからない。ただ、木村文乃の演技は素晴らしかったし、トラウマの描き方もよかったし、悪気はなくても人をゆるく切りつけるように傷つける人の罪深さも絶妙だった。オススメです。