四コマ漫画『ペケ』を再読した。最高。


×(ペケ)(5) (フラワーコミックス)

おそらく、一部の世代には絶大な人気があった思う四コマ漫画。ネット普及前に書かれたとは思えないほど博識な作者の叡智から誕生したアイロニカルなギャグの数々。まじで天才。

作中ではたびたび作者がペケは売れゆきが良くないって愚痴るシーンがたびたび登場してるけど、当時のランク王国で少なくとも5巻が上位にランクインしてたのを覚えてるので、結構売れてたと思う。というか、うちの近所の本屋に普通に売ってたし。

ペケは山本(弟)やイナバ兄弟、瞳、岡本夢二、アンデルセンなど南高校の生徒が中心となって、それぞれ交錯したりしなかったりしながら止まった時の中で織りなされる皮肉と言いづらい本音たっぷりのギャグ漫画で、「ああいるよねこういうやつ」っていう当事者とそいつらを眺めてせせら笑う両方のキャラクターたちの立ち回りが、異様なハイテンションで展開される。ペケの面白さは「ええ、そんなことでそこまでなる?」っていう過剰さで、例えば30年経った今でも語り継がれているのは恵方巻きのエピソード。

登場人物はいつものレギュラーではなく、この回のみに登場する高校生女子・貴子とその両親。母に夕食のリクエストを聞かれた貴子は「知らないの!?」と節分で恵方巻きを食べる験担ぎの元ネタとなったエピソードを怒りながら早口(だと思う)でまくしたてるという話。当時の日本は恵方巻きの流行前だったけど、たぶんペケファンの間では密かに流行っていたんじゃないかと思う。かくいう私もまだ小学生だったが作ってもらった巻き寿司に無言でかじりついた覚えがある。

そして、ペケにはバレンタインにまつわるエピソードも名作が多い。

中でも瞳が手作りチョコを彼氏の俊夫にプレゼントした際に「大変だったでしょ」みたいにいわれ、テンパリングの面倒な手順を淡々と明かすという話も最高。まあ実際テンパリングは面倒だし大変なんだけどね。一方で、それ以前の話になると瞳はチョコレートの作り方をよくわかっていなくて、ブルームしまくった大惨事の完成品を俊夫に渡していた。とはいえ、これをバネに頑張るようなキャラじゃないので、たまたまテンパリングした年はしてみたかっただけだと思う。

関東水瓶隊とか極楽ジャックとか、保健室の先生とかイナバとイクラちゃんとか、高校教諭の正体とか、もうあげたらキリがないくらい好きな話とキャラで溢れている。「なーんてね、ふふ……」とかみんな言ってた。あとパールライスネタもよい。一時期、好きなテレビ番組は深夜の台風速報って答えてたよね。

ところで自分の人間性を作り上げた漫画ってなんだったけ、とふと思い出してみた。

幼少期から思春期に唸るほど好きだった漫画は『輝夜姫』
『多重人格探偵サイコ』『I`ll』『木島日記』『ぼくの地球を守って』『金田一少年の事件簿』『欲望バス』『東京BABYLON』『源氏』、伯爵カインシリーズとかかな。まだ思い出せてないのはきっとあるけど、空気感とか世界観はこのあたりにかなり影響されてる。

たぶん始まりはこのあたりで、どんどんいろんな漫画や本を読んで映画を見て、今の自分が形成されているから感慨深いね。