上映中の映画「どうすればよかったのか?」を見た。
非常に良かった。すばらしいと思う。私が今まで見たドキュメンタリーの中でもかなり上位。
映画は日本でもトップクラスにあたるエリートな両親と、国立大医学部在籍中に統合失調症を発症し、その後自宅に20年以上軟禁されていた女性を、その弟が撮り続けた作品。親は2人もハイクラスな研究医であり、自宅は研究機材と大量の文献で埋め尽くされている。
こう書くと凄惨な現場を思い浮かべそうだが、実際にこの両親はとても穏やかで彼女を虐待している雰囲気はない。
発症した1980年代は現在とは違って差別も酷かっただろう時代で、親は優秀な彼女にその病歴を残したくない一心で周りから隔離して隠し通そうとした。本当に統合失調症ではないと思っていたのだろうか。医者が? そんなわけないと思う。分かっていたのに、エリートな自分の経歴にシミを残したくない思いがあったのだろう。
虐待ではなかっただろうけど、娘に20年以上も適切な医療を受けさせなかったことや軟禁していたことは間違いなくマルトリートメントといわれる準虐待行為にあたる。氷山の一角だろうから、これを機に同じような親たちがあぶり出されてほしいものだ。この国はあまりに親に甘い。そして子どもを自殺においやり続ける。
物語では監督である弟が姉を撮影し続ける。家族も撮り続ける。家族は穏やかだったが、3人ともが時計のある室内でずっと腕時計を付けていたり、母親すら10カ月も家から一歩も外に出ないことがあったり、人が話し終わるのを待たずに被せるように(お門違いな)自分都合の結論をまくしたてたりする。とても異質に映った。両親ともに、自分が間違っていないことに自信のある人間の話し方だった。人の話は聞き入れない。それどころか、診断すら捻じ曲げてなかったことにする。母はことあるごとに「医師として」と口にする。
結局、母親の病を気にどうしようもなくなった父が折れ、ようやく姉は医療につなげられた。そして入院し服薬が始まり、劇的に回復する。
彼女の20数年を返してあげてほしい。勝手に作って勝手に産んで勝手に期待して、ドキュメンタリーの中でも分かる強烈なプレッシャーからおそらく発症しただろう彼女の人生を、返してあげてほしい。
薬がよくあって楽しそうに外出している彼女の笑顔やピースサインは、本当に幸せそうだった。でももっと怒っても良かったのに、とも思う。優しい人だったのだろう。だからこそ余計に悔やまれる。
音声がよく聞こえなかった部分があって詳細は聞き取れなかったけど、父は彼女にまだ国家試験を受けさせようとしていたり、亡くなった後もお棺に論文を入れたりと、背中をスーッと冷たいものを走る感覚があった。さすがにホラーだった。
人間は頼んでもないのに勝手に産み落とされ、いつのまにか扶養義務が課せられ、勝手に期待され、望みもしない人生を強要され、抵抗したら暴力をふるわれたりもする。私たちは望んで生まれてきていない。これは紛れもない事実だ。勝手につくっておいて自分勝手な親が多く、ようやく可視化されるようになった。子を作らない人が増えたことで、親ではなく子の人権が少しずつ尊重されるようになった。親の味方が多いと被害者である子どもの存在がないがしろにされていた。どれだけ親のせいで子どもたちが自殺していったのか。自殺しないまでも毒親の被害者は途方もなく多い。この国は。
どうすればよかったのか?
当然、早急に姉を医療につなげるべきだった。それ以外に答えはない。両親の選択は彼女を守るためだったとは思えない。最初はそうだったとしても、5年も経過したころには保身が勝っていたと思う。それほどまでに20年という年月は長すぎる。
非常に良かった。すばらしいと思う。私が今まで見たドキュメンタリーの中でもかなり上位。
映画は日本でもトップクラスにあたるエリートな両親と、国立大医学部在籍中に統合失調症を発症し、その後自宅に20年以上軟禁されていた女性を、その弟が撮り続けた作品。親は2人もハイクラスな研究医であり、自宅は研究機材と大量の文献で埋め尽くされている。
こう書くと凄惨な現場を思い浮かべそうだが、実際にこの両親はとても穏やかで彼女を虐待している雰囲気はない。
発症した1980年代は現在とは違って差別も酷かっただろう時代で、親は優秀な彼女にその病歴を残したくない一心で周りから隔離して隠し通そうとした。本当に統合失調症ではないと思っていたのだろうか。医者が? そんなわけないと思う。分かっていたのに、エリートな自分の経歴にシミを残したくない思いがあったのだろう。
虐待ではなかっただろうけど、娘に20年以上も適切な医療を受けさせなかったことや軟禁していたことは間違いなくマルトリートメントといわれる準虐待行為にあたる。氷山の一角だろうから、これを機に同じような親たちがあぶり出されてほしいものだ。この国はあまりに親に甘い。そして子どもを自殺においやり続ける。
物語では監督である弟が姉を撮影し続ける。家族も撮り続ける。家族は穏やかだったが、3人ともが時計のある室内でずっと腕時計を付けていたり、母親すら10カ月も家から一歩も外に出ないことがあったり、人が話し終わるのを待たずに被せるように(お門違いな)自分都合の結論をまくしたてたりする。とても異質に映った。両親ともに、自分が間違っていないことに自信のある人間の話し方だった。人の話は聞き入れない。それどころか、診断すら捻じ曲げてなかったことにする。母はことあるごとに「医師として」と口にする。
結局、母親の病を気にどうしようもなくなった父が折れ、ようやく姉は医療につなげられた。そして入院し服薬が始まり、劇的に回復する。
彼女の20数年を返してあげてほしい。勝手に作って勝手に産んで勝手に期待して、ドキュメンタリーの中でも分かる強烈なプレッシャーからおそらく発症しただろう彼女の人生を、返してあげてほしい。
薬がよくあって楽しそうに外出している彼女の笑顔やピースサインは、本当に幸せそうだった。でももっと怒っても良かったのに、とも思う。優しい人だったのだろう。だからこそ余計に悔やまれる。
音声がよく聞こえなかった部分があって詳細は聞き取れなかったけど、父は彼女にまだ国家試験を受けさせようとしていたり、亡くなった後もお棺に論文を入れたりと、背中をスーッと冷たいものを走る感覚があった。さすがにホラーだった。
人間は頼んでもないのに勝手に産み落とされ、いつのまにか扶養義務が課せられ、勝手に期待され、望みもしない人生を強要され、抵抗したら暴力をふるわれたりもする。私たちは望んで生まれてきていない。これは紛れもない事実だ。勝手につくっておいて自分勝手な親が多く、ようやく可視化されるようになった。子を作らない人が増えたことで、親ではなく子の人権が少しずつ尊重されるようになった。親の味方が多いと被害者である子どもの存在がないがしろにされていた。どれだけ親のせいで子どもたちが自殺していったのか。自殺しないまでも毒親の被害者は途方もなく多い。この国は。
どうすればよかったのか?
当然、早急に姉を医療につなげるべきだった。それ以外に答えはない。両親の選択は彼女を守るためだったとは思えない。最初はそうだったとしても、5年も経過したころには保身が勝っていたと思う。それほどまでに20年という年月は長すぎる。