映画「裸足で鳴らしてみせろ」を見る。鳴らせてでも鳴らせてみろよでもない。良い。
廃品回収の家業を手伝う主人公の直己と、偶然出会った盲目の養母に育てられた槙の物語。2人は余命わずかの養母の代わりに槙が世界旅行をしていることを装って、彼女が見たかった景色を音で記録し続ける。夜中のプール、パン粉を敷き詰めた箱、廃品のパイプなどを使って。
もうね、めちゃくちゃおもしろかった。すばらしい。ひとつひとつの要素がまずすばらしくて。アックスとかFとかアフタヌーンとかビームが2000年前後に掲載していた切ない系漫画にありそうな物語。最高。こういうの求めてた。
しかも設定とか要素が良いだけじゃなくて、2人の関係の描き方が秀逸。最初はBL系なのかなと思って見てたけど、簡単な関係じゃないの。直己は最初から友人以上恋人未満の高校時代からの女友達がいる。彼女はカナダに留学してしまう。その後に槙と出会う。会話から槙はおそらく自分のゲイというセクシュアリティに気づいている。2人で養母のために世界旅行を音で偽装するうちに少しずつ身体的な距離が縮まっていくが、性的な一線を超えそうで超えない。小学生がじゃれ合うように叩いたり突き飛ばしたり、ときに羽交い締めしたり。指先が触れ合ってキス……みたいな簡単な展開にはならない。
これ、めちゃくちゃ的を射てる描き方だと想うんだよね。特に片方のセクシュアリティが不安定な場合には。だって経験がない子が突然触れ合って抱き合って挿入、みたいな展開になるわけないじゃん。男女でもそのあたり難しいのに、事前準備がないと大事故になる男性同士ならなおさら。だからファンタジーじゃなくてリアリティとしてちゃんと2人の関係が描かれているのが好印象だった。
そもそも人のセクシュアリティってパキッと分けれるものでもないよね。みんな一様にヘテロって思い込んでるけどバイじゃないってどうして分かるんだろう。パンセクシュアルの可能性もあるよね。アセクシャル/アロマンティックの可能性だってある。みんないろいろとグレーじゃないかな。そんで誰かと出会ったり近づいたりして、あるとき気づく。
直己は槙と出会って自分のセクシュアリティに気づきそうになる。でも、そこに障壁がある。偏見なのか何なのか認めたくないのか。そんなとき、養母が死んでしまう。そして2人を阻んでいた壁がぶち壊れるかと思いきや、直己の父の裏切りから2人を取り巻く人生がおかしくなってくる。
この展開に賛否があるっぽいけど、私は逆に好きな流れではあった。まあ鬱映画至上主義だからちょっと歪んだ嗜好ゆえなんだけど。たしかにそんな外野からのネガティブなメスが入らず、とことん悩み抜く直己も見たかった気がする。
受刑者となった直己は愚かな自分と対峙して天真爛漫な自分が愛した槙を束縛しないことを選ぶ。自分が愛したのは自由気ままな槙だからと気づいたんだろうね。この選択も美しく感じたよ、私は。
ただちょっと……と思ったのは、強盗致傷ってもっと罪重くないか? ってこと。おばあちゃんがなくなったのは事故だったって立証されたのかな。無理じゃない? 面会のときにもう会えないって言ってたからてっきり無期懲役くらったのか死刑になったのかと思ったけど、案外早めに出てきてたから肩透かし食らった感はある。
あと、裁判判決服役ってなると普通に5年以上たってると思うんだけど、同級生ちゃんがコンビニでバイトしててそれも不思議だった。見た目も変わってないし。強盗は5年以上の有期刑、情状酌量される理由もないでしょあの場合。父親にお金勝手に使われたってのは本当に気の毒だけど親が子のお金を使い込むことに裁判官は厳しく見てくれないと思うんだ、日本は親の立場がかなり強いので。
ということから、出てきたのが7年後だとして。そんな長い年月、2人で作ったテープを仕事の車に積んでいた槙。偶然再会して、スピーカーで流す最後のシーンは邦画の歴史に残る名シーンだと思う。もう見てて胸を掻きむしられた。この感情ってなんていうんだろ。切ない、悲しい、苦しい、辛い、エモい? せつなすぎて首元を締め付けられてる感じ。苦しくてつらくて最高なあれ。もどかしくて、もう2度と戻らないのわかってる最高のメリバ。
槙は普段から流してたのかな。直己がどっかにいるかもと思って? あの最高の時間を俺は絶対に忘れてやらねえよっていうメッセージに見えた。こんなの最高でしょ。
ちなみに、ブエノスアイレスとかいろんな映画のオマージュが散見されたみたいで、全然気づかなかった私はどうかしてるよね……見てるのに……。ちょっとオマージュ元を見返してみようっと。
廃品回収の家業を手伝う主人公の直己と、偶然出会った盲目の養母に育てられた槙の物語。2人は余命わずかの養母の代わりに槙が世界旅行をしていることを装って、彼女が見たかった景色を音で記録し続ける。夜中のプール、パン粉を敷き詰めた箱、廃品のパイプなどを使って。
もうね、めちゃくちゃおもしろかった。すばらしい。ひとつひとつの要素がまずすばらしくて。アックスとかFとかアフタヌーンとかビームが2000年前後に掲載していた切ない系漫画にありそうな物語。最高。こういうの求めてた。
しかも設定とか要素が良いだけじゃなくて、2人の関係の描き方が秀逸。最初はBL系なのかなと思って見てたけど、簡単な関係じゃないの。直己は最初から友人以上恋人未満の高校時代からの女友達がいる。彼女はカナダに留学してしまう。その後に槙と出会う。会話から槙はおそらく自分のゲイというセクシュアリティに気づいている。2人で養母のために世界旅行を音で偽装するうちに少しずつ身体的な距離が縮まっていくが、性的な一線を超えそうで超えない。小学生がじゃれ合うように叩いたり突き飛ばしたり、ときに羽交い締めしたり。指先が触れ合ってキス……みたいな簡単な展開にはならない。
これ、めちゃくちゃ的を射てる描き方だと想うんだよね。特に片方のセクシュアリティが不安定な場合には。だって経験がない子が突然触れ合って抱き合って挿入、みたいな展開になるわけないじゃん。男女でもそのあたり難しいのに、事前準備がないと大事故になる男性同士ならなおさら。だからファンタジーじゃなくてリアリティとしてちゃんと2人の関係が描かれているのが好印象だった。
そもそも人のセクシュアリティってパキッと分けれるものでもないよね。みんな一様にヘテロって思い込んでるけどバイじゃないってどうして分かるんだろう。パンセクシュアルの可能性もあるよね。アセクシャル/アロマンティックの可能性だってある。みんないろいろとグレーじゃないかな。そんで誰かと出会ったり近づいたりして、あるとき気づく。
直己は槙と出会って自分のセクシュアリティに気づきそうになる。でも、そこに障壁がある。偏見なのか何なのか認めたくないのか。そんなとき、養母が死んでしまう。そして2人を阻んでいた壁がぶち壊れるかと思いきや、直己の父の裏切りから2人を取り巻く人生がおかしくなってくる。
この展開に賛否があるっぽいけど、私は逆に好きな流れではあった。まあ鬱映画至上主義だからちょっと歪んだ嗜好ゆえなんだけど。たしかにそんな外野からのネガティブなメスが入らず、とことん悩み抜く直己も見たかった気がする。
受刑者となった直己は愚かな自分と対峙して天真爛漫な自分が愛した槙を束縛しないことを選ぶ。自分が愛したのは自由気ままな槙だからと気づいたんだろうね。この選択も美しく感じたよ、私は。
ただちょっと……と思ったのは、強盗致傷ってもっと罪重くないか? ってこと。おばあちゃんがなくなったのは事故だったって立証されたのかな。無理じゃない? 面会のときにもう会えないって言ってたからてっきり無期懲役くらったのか死刑になったのかと思ったけど、案外早めに出てきてたから肩透かし食らった感はある。
あと、裁判判決服役ってなると普通に5年以上たってると思うんだけど、同級生ちゃんがコンビニでバイトしててそれも不思議だった。見た目も変わってないし。強盗は5年以上の有期刑、情状酌量される理由もないでしょあの場合。父親にお金勝手に使われたってのは本当に気の毒だけど親が子のお金を使い込むことに裁判官は厳しく見てくれないと思うんだ、日本は親の立場がかなり強いので。
ということから、出てきたのが7年後だとして。そんな長い年月、2人で作ったテープを仕事の車に積んでいた槙。偶然再会して、スピーカーで流す最後のシーンは邦画の歴史に残る名シーンだと思う。もう見てて胸を掻きむしられた。この感情ってなんていうんだろ。切ない、悲しい、苦しい、辛い、エモい? せつなすぎて首元を締め付けられてる感じ。苦しくてつらくて最高なあれ。もどかしくて、もう2度と戻らないのわかってる最高のメリバ。
槙は普段から流してたのかな。直己がどっかにいるかもと思って? あの最高の時間を俺は絶対に忘れてやらねえよっていうメッセージに見えた。こんなの最高でしょ。
ちなみに、ブエノスアイレスとかいろんな映画のオマージュが散見されたみたいで、全然気づかなかった私はどうかしてるよね……見てるのに……。ちょっとオマージュ元を見返してみようっと。