ブラック・ミラー/シーズン7が最高な件。まずは「普通の人々」「ベッド・ノワール」「ホテル・レヴェリー」を見た。


「普通の人々」
多分40代後半の夫婦が主人公。俳優の年齢は妻49歳、夫45歳。夫の方は正直60代くらいに見える。2人は不妊夫婦で中年に差し掛かっているため、子どもは偶然の幸運に任せようしている。でもベビーベッドは既に購入済み。不妊治療はしてなかったと思う。そんな中、妻の予後不良の脳腫瘍が発覚。手立てはないと言われながらも、実験段階のサービスで助かるかもと紹介される。

そのサービスはリヴァーマインドといって、なくした脳の一部をオンラインのクラウドに保存された記憶で補完させるという医療サブスク。そうサブスク! 月々基本料金が300ユーロもかかる! ブラック・ミラーぽい! もう破滅の未来しか見えない……と思ったら案の定、基本プランでは途中に広告が挿入されるように。妻が突然その場に“ふさわしい”広告を口走るようになる。妻は小学校教師なので、それが問題に。どうにかするためにはプランをグレードアップするしかない。そしてプラスプランの月々800ユーロを支払うように……。

このせいで金銭的に追い込まれた夫は、過激なオンライン配信サービスに手を出して、体を張ったパフォーマンスで稼ぐように。しかし……。

とまあかなりの鬱展開とバッドエンドがブラック・ミラーぽくて最高だったんだけど、このドラマのサブスクはたぶん「子ども」のメタファなんだよね。絶対お金がかかる、良い環境で育てるにはさらにかかる、セレブはめちゃくちゃ金かけてる。しかも解約不可。

主人公夫婦は世帯年収が下の上くらいなんだと思うけど、子どもを欲しがってる。それに罪なんか絶対にない。ただ、その年令で子を持っても貧困に近い状態で大変な思いをするであろうことは想像にかたくない。

イギリスは日本よりも養育費がめちゃくちゃかかるらしくて、基本プランですら払うのに大変だった夫婦だと、かなり状況はきびしい。それをこういう形で風刺したのかなと感じた。きっついね。でも、厳しいけどこれがリアル。


「ホテル・レヴェリー」の方は、ブラック・ミラーには珍しく美しくも儚く、あまり皮肉っぽい風刺もない物語。いや本当に素晴らしかった。見て。

昔の映画の舞台をバーチャルリアリティに俳優も一緒に再現するというテクノロジーが発明されて、この中で人気女優である主人公が主役を演じることに。もともと主役は男性俳優。でも現代ってことで女優が演じてもおもしろいよね、と。すると、演じる中でバーチャルであるはずの相手役女優にまるで自我が芽生えたようになり……。

いやーラストのオチといい最高だった。もうこれは見てとしかいえない。震えた。最高傑作。とってつけたようなハッピーエンドでも苦しいバッドエンドでもない。でも、ほんのり切なくてぎゅっと胸が掴まれるような、でもテクノロジーもいいねって思えるような終演だった。よいもの見させてもらった!